頭部外傷

頭部外傷について

手や足をうった時はなんとも思わないのですが、頭をうった場合は、たとえその時はなんともなくても、“後で異常が出て、後遺症として残ってしまうのではないか”と心配になるものです。そこで、頭部の外傷について簡単にお話します。

 

頭の中、つまり頭蓋骨の中には重要な臓器である脳が入っていますので、頭をうつことで脳に損傷が及び、その働きに異常が起こった場合が問題となります。脳の損傷には、衝撃が直接及んで起こるもの(一次性損傷)とそれに引き続いて起こるもの(二次性損傷)があります。前者には脳が強くうちつけられて生ずる脳の傷(脳挫傷)や、脳のゆがみによっておこる神経線維の断裂などがあります。後者には血液が頭のなかにたまる頭蓋内血腫とよばれるものや、一次性脳損傷のあとに起こる脳のむくみや腫れ(これを脳浮腫、脳腫脹といっています)があります。

 

脳の働きに異常が出てくると、意識障害などの症状がでてきますが、二次性のものによる症状は、一次性の場合とは異なり、遅れて(多くは十数分から数時間)出てくるのが特徴です。そのため、気が付くのが遅れ、治療が遅くなってしまうことがあります。頭をうった後に遅れて症状が出てきた時、つまり、はじめは元気であったのに、後で意識が朦朧(もうろう)としてきたような時は、脳神経外科があり、救急医療体制をとっている病院にすぐにお連れになることが大事です。

 

私達は、病院に来た時に何の異常がない患者さんの場合にも、家族の方に、“頭部外傷後の注意”というパンフレットを渡して、その後の注意を促しています。

 

頭部外傷後の注意

頭をうった時には、頭の中にいろいろな変化が起こり得ます。特に頭蓋骨の中の出血は、最初は何ともなくても、血腫(血のかたまり)が大きくなるにしたがって、脳を圧迫するようになり、生命に危険をおよぼすことがあります。はじめは元気だったのに、急に吐くようになったり、意識がなくなったりし、時には死亡してしまうのは、このような頭蓋内血腫のためです。

 

出血による症状の出方は、血のたまる速さによってさまざまで、頭をうった後すぐに起こることもあるし、2、3日たってから起こることもあります。そのため、現在何も症状がなくても、十分に注意する必要があります。 以下に、頭の中に何か異常が起こり始めた時にでやすい症状、兆候(しるし)を挙げますので、よく読んでおいてください。そしてこれらのうちどれかがある場合には、早めに電話連絡をしていただくか、患者さんを病院へお連れになってください。

 

  1. 頭痛がだんだん強くなり、吐き気、嘔吐が何回も起こる。
  2. ぼんやりしてきたり、ほうっておくとすぐ眠ってしまったり、起こしてもなかなか起きなかったりする(受傷当日は夜間でも、ときどき起こしてみて、はっきり返事ができるか、確かめてください)。
  3. 物が二重に見えたり、物がよく見えなくなったりする。
  4. 手足が動かしにくくなったり、しびれたりする。とくに右と左で動き(力の強さ)が違う。
  5. けいれん(ひきつけ)が起きる。
  6. 瞳孔(ひとみ)の大きさが右と左で異なる。

 

なお、小さい子供さんは症状が出にくいことがありますので、たとえ元気にしていても、2~3日は目を離さないで観察することが大切です。
また、大人でも頭を強くうった後、少なくとも1~2日間は安静にし、一人で外出したりしないように注意してください。