インフルエンザの治療
「インフルエンザの治療」について
そろそろインフルエンザの流行期となりますが(毎年年明け頃に増え初め1月中旬から2月にかけてピークを迎えます)、予防接種はお済みでしょうか。前回号で、インフルンザの怖さ特に脳炎、脳症についてと、予防接種について作成しましたところ、約180名のインフルエンザ予防接種の申込があり、大変喜ばしいかぎりです。みなさんに予防接種の重要性がわかっていただけたことと思います。しかし、予防接種をしていてもかかってしまうこともありますので、今号では予定を変更して、かかってしまった場合の治療について、また注意点について作成しました。
インフルエンザと解熱剤
先日新聞でも報道されましたが、解熱剤であるジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)がインフルエンザ脳炎、脳症の重症化に関与している可能性があるとのことでインフルエンザ脳炎・脳症には禁忌となりました。しかし、最初にみて脳炎・脳症になるかどうかの判断は難しく、またインフルエンザか普通の風邪かの診断も最初はつけにくいものです。また他の解熱剤メフェナム酸(ポンタール、よく処方されている白い解熱剤のシロップなど)も今回は禁忌とまではなりませんでしたが、かなり危険性が高いことが言われています。私も開院当初から解熱剤の危険性は訴えており、使ってもアセトアミノフェン(アンヒバ座薬、ピリナジン粉薬)にすべきだとしてきましたし、小児科学会でもそのような話になっています。したがって初めから小児の解熱剤は最も安心して使えるアセトアミノフェンにすべきであり、シロップをと言う声もあり、今年できましたカロナールシロップというものを採用しました。これは安全に使える初めてのアセトアミノフェンの解熱剤シロップだと思います。しかし、他の研究でも解熱剤を使用した場合としなかった場合では明らかに使用しなかった場合の方が有熱期間も短く、出来るだけ使わないほうがよいかと思います。またインフルエンザはウイルスであり、抗生剤は無効です。二次感染予防に抗生剤を使用することもありますが、基本的に有熱期間などは変わらないようです。つらいですが、水分を多くとってゆっくり休むのがよいようです。また乾燥はインフルエンザが繁殖しますので、部屋の湿度を保ち、感染経路は空気中のウイルスを吸うことなのでよくうがいをしましょう。
治療薬とその安全性、耐性
平成10年よりインフルエンザの治療薬アマンタジン(シンメトレル)が承認されました。これは発症から48時間以内に投薬するとより早い解熱効果が得られるというものでありますが、しかしこの薬が治療の中心にならないことには理由があります。まず、約20%という高い確率で副作用(ふらつき、不眠、嘔吐など)がみられるということです。次に最大の問題点はその薬を使った場合30%の確率でその人から排泄されるウイルスはアマンタジンに耐性になるということです。つまり、その薬を飲んでいる人からインフルエンザが移った場合、例え重症でも30%の確率でせっかくある薬が効きません。さらにこの薬はインフルエンザにはA型とB型があるのですが、A型にしか効きません。以上のような耐性という最大の問題がある以上、この薬の使用は限定して使わなくてはいけません。使用する対象は、痙攣を起こしたり、意識障害があるなどの脳症の恐れが強い場合に入院の上使用すべきです。また41℃をこえる高体温、基礎疾患のある人も要注意です。せっかくの治療薬ですが、全てに使うわけではなく、大事に使う必要があります。 アマンタジンの他にザナミビル(リレンザ、吸入薬12歳以上、48時間以内)、オセルタミビール(タミフル、内服、小児用製剤も開発中)の2種類の抗インフルエンザ薬が開発され、もうすぐ保険適応となります。これらは耐性の問題もなく、比較的安全に使えるはずですので今後に期待したいと思います。
くれぐれも他の病院ではインフルエンザの治療薬をくれるといって飛びつかないで欲しいものです(日本は世界中で異常にこの薬が使われており、予防接種率も低いという問題を抱えています)。 厚生省のインフルエンザ情報のホームページは http://influenza-mhw.sfc.wide.ad.jp/にて公開されています。参考にしてみてください。
編集後記
今回は予定を変更して続・インフルエンザとしました。インフルエンザは怖い病気です。これからは部屋の湿度管理、うがい・手洗いの励行をおねがいします。また今回予定していました乳児の喘鳴の原因となるRSウイルスも流行しています。風邪に気をつけてよいお年を迎えられますように。