ワクチン新時代

「ワクチン新時代」について

新しいワクチンが昨年から今年にかけて次々に承認され、接種することができるようになりました。今回はヒブワクチン、小児肺炎球菌ワクチン、子宮頚癌ワクチンの説明をいたします。

 

日本はワクチン後進国

これらのワクチンは既に世界各国で行われており、定期接種としている国も多く、その有効性や安全性は確立されているものと考えてよいと思います。日本は行政の遅れによって、やっと昨年から次々に接種できるようになってきましたが、現在日本では任意接種であり、一部の自治体のみで補助がでる程度で、基本的には自己負担となります。

 

ヒブワクチン(アクトヒブ)]

インフルエンザ桿菌(細菌)B型のワクチンです。従来行われているインフルエンザはウイルスですので、同じ名前ですが、全く別のものとなります。

 

また中耳炎の主な原因のインフルエンザ菌はB型以外ですので、これに対する予防効果もありません。

 

では一体何を予防するかというと、小児での細菌性髄膜炎の最多原因菌がこのB型インフルエンザ桿菌であり、これを予防します。患者は年間600人(全国)とまれですが、発症すると死亡率5%、後遺症を残す率25%という危険な疾患です。また以前は抗生剤治療の反応がよかったのですが、最近薬剤耐性菌が増加しており、今後治療に苦労することが予想されます。

 

小児肺炎球菌ワクチン(プレベナー)]

肺炎球菌ワクチンはすでにニューモバックスというものがあり、新型インフルエンザにかかったときに、肺炎球菌感染による重症例があるため、予防接種が推奨されました(高齢者)ので、ご存知のかたも多いかと思います。しかし、このワクチンは小児では免疫がつかないという問題点がありました。

 

そこで、小児用に新しく開発されたものが小児肺炎球菌ワクチン(プレベナー)です。この肺炎球菌も髄膜炎の原因菌第2位です。そして、この肺炎球菌は髄膜炎の他に中耳炎の32%、肺炎の20%の原因菌となっています。現在肺炎球菌には90種類以上の型がわかっていますが、そのうちの7種類が入っています。この7種類で肺炎の71%、中耳炎の63%、髄膜炎の76%がカバーできるとされています(注意:国内において、肺炎・中耳炎の予防効果については現在研究中です。海外では有効の報告がみられます)。また数年後に13種類入ったものが発売予定で、さらにカバー率の上昇も期待できます。そしてインフルエンザ菌でも述べましたが、こちらも薬剤耐性菌の割合が高く深刻です(なめがたこども新聞第7号)。現在も難治性中耳炎や反復性中耳炎の多くが薬剤耐性肺炎球菌感染と考えられます。

 

子宮頚癌ワクチン(サーバリックス)]

子宮頚癌は日本では、年間15000人が罹患し、3500人が死亡しております。罹患率は20~30代で急増します。そして子宮頚癌はヒトパピローマウイルス(HPV)感染が原因であることがわかりました。このウイルスの感染経路は主に性的接触によるものと考えられております。そしてこのウイルス感染は約6割の女性に起こるといわれ、大多数は自然治癒しますが、そのうち0.1%(10000人あたり6人)が癌になるといわれております。
このウイルスは現在100種以上の型がわかっており、ワクチンには2種類しか入っておりませんが、90%以上の予防効果が認められております。またこのワクチンはウイルス感染前に行う場合に最も有効といわれ、世界的には11~14歳の女児を対象に接種が行われております。

 

接種時期と回数、金額は??

[アクトヒブ] 供給不足のためHPでお知らせいたします。

接種開始年齢 回数 料金
生後2~6ヶ月 初回3回+追加: 1年後1回 8400円/回(税込 当院)
生後7ヶ月~1歳未満 初回2回+追加: 1年後1回
1歳~5歳未満 1回のみ

 

[プレベナー(小児肺炎球菌ワクチン)]

接種開始年齢 回数 料金
生後2~6ヶ月 初回3回+追加:1回 10500円/回(税込 当院)
生後7ヶ月~1歳未満 初回2回+追加:1回
1歳~2歳未満 2回 初回1回+追加:1回
2歳~9歳以下 1回のみ 当院では5歳未満

 

[サーバリックス] 健診センターで

接種開始年齢 回数 料金
10歳以上女性 3回 16800円/回(税込 当院)

 

編集後記

待望の小児肺炎球菌ワクチンが使えるようになりました。外来をしていて中耳炎の患児が多いこと、また耐性菌が多く、治療に苦渋しております。そのひとつの解決策として期待できるものと考えております。値段は高いですが、特に保育園に通っているお子様や中耳炎で苦労されている方にはこのワクチンをお勧めいたします。