花粉症について

スギ花粉症の治癒を目指して

花粉症といえば、目がかゆかったり、鼻水・鼻づまりなどとてもつらいものです。今まで花粉症の治療の主流は、抗アレルギー薬の内服や目薬などの症状をやわらげるもので、治しているわけではありませんでした。

 

[アレルゲン免疫療法(減感作療法)]

すでに治癒をめざすものとして減感作療法という治療があります。これはアレルギーの原因であるアレルゲンを少量から投与することでからだをアレルゲンに慣らし、アレルギー症状をやわらげる治療です。

 

[減感作療法 従来の方法(注射)]

今までは花粉の抽出液を少しずつ注射していました。週に1~2回の注射で開始し、2週間に1回を2ヶ月、その後1ヶ月に1回の注射を2年以上続けるものです。注射という負担を考えると小児では勧められるものではありませんでした。

 

[減感作療法 新しい舌下免疫療法]

しかし、昨年、注射ではなく、口に含むもので、減感作療法を行うことができる治療薬(シダトレイン)が発売されました。舌下に保持したまま2分間、その後飲み込みます。痛みはなく自宅で服用できる、画期的な治療といえます。

 

[効果はどれくらい?]

開始後すぐに効果がでるわけではありません。花粉が飛散していないときも含めて毎日服用します。期間は3年以上が推奨されています(3~5年)。現在での治癒率は20%と低いですが、30%以上で症状軽減、つまり2分の1以上の確率でよくなります。残念ながら10~20%で効果なしとの報告があります。

 

[副作用は?]

強いアレルギー反応がでることがまれにあるとされていますが、非常に少ないようです。口の中にアレルギーのもとをいれますので、口やのどの症状がでることはあります。特に服用後30分、開始初期の1ヶ月間、スギ花粉が飛散している時期は副作用がでやすいようです。

 

[いつから開始できるの?]

開始時の年齢は12歳以上となっています。また花粉飛散シーズンである1~5月に開始することはできません。開始後は1~5月も服用してください。

 

[どこで受けられるの?]

すべての医療機関で行えるものではありません。
講習や試験に合格した登録医のみ処方できます。当院では小児科 太田医師、眼科 井口医師(予定)のみとなります。他院は各医療機関に御確認ください。
小児科では平成28年6月から開始します。月曜午後、予約制となっています。まずは中学生・高校生、その親御さんを対象とします。
まずは血液検査などでスギ花粉症の確定診断を行います(結果まで1~2週間かかります)。2回目に結果説明と治療の説明、そして第一回の投与を行い、副作用のチェックをします。他院にてアレルギー検査をお済の方は結果を持参してください。

 

[投与方法は?]

1日1回、シダトレンを舌の下に滴下し、2分間保持した後、飲み込みます。その後5分間は、うがい・飲食を控えてください。
1回目は病院で行い、それ以降は自宅で服用します。
 ・1-7日用(青いボトル 200JAU/mL)、
 ・8-14日用(白いボトル 2000JAU/mL)、
 ・15日以降(アルミパック)を毎日
と増量していきます。

 

[服用時の注意]

 ・服用する前後2時間程度は激しい運動、入浴、アルコール摂取を控えてください。
 ・シダトレン治療中もスギ花粉を回避する生活を心がけてください。抗アレルギー薬も使用してかまいません。

 

[金額は?]

薬代だけで約1000円+診察料で月数千円になります。他に検査した場合はその費用がかかります。
月に1回の受診が必要となります。

 

[スギ花粉以外の免疫療法は?]

すでにダニアレルギー用舌下免疫療法の治療薬が発売されており、当院でも準備はできています。スギ花粉治療が軌道にのった後開始予定です。

 

編集後記

治癒率が低く、毎日・数年続ける負担を考えるとお勧めできない、という医師もいます。しかし、花粉症のつらさを考え、アレルギーの薬では治癒に向かうわけではないことを考えると、この負担で半分以上の確率でよくなるのであれば私はお勧めできると考えています。